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ハンミョウの仲間

 


脚が長く,大あごや複眼は大きく発達している.一般に後翅はよく発達し,地表近くを飛ぶが,すぐにとまる.成虫は主に昼間活動し,昆虫類など小動物を捕食する.日本には23種が分布.別名をミチオシエ,ミチシルベなどと呼ぶ.いずれも"道"に関わりがあるが,山道でこの甲虫に出会うと,足元からさっと飛び立ち,程なく路上のいくてに舞い降り,人のくるのを待つかのように頭を高めに持ち上げた姿勢でちょろちょろ小走りに動き回り,人が近づくと再び舞い立つ習性のある甲虫である. 最も普通種であるハンミョウは金色に輝くきわめて美しい種で,河原やその土手,山沿いの比較的乾燥した道路などで多数観察することができた.多少高地性のミヤマハンミョウも同様である. これらハンミョウ類の幼虫は,土中に円筒形の縦穴を掘った中に頭を上にしてすみ,付近を通る他の昆虫類を穴から乗り出してすばやくとらえ,穴に引き込み食す肉食性昆虫である.親も肉食性である.これらのハンミョウが減少した理由は,道路や土手が人工化したことや,殺虫剤によるところが多大であると思われる.また,環境破壊といった生息環境の悪化が一番の原因である.
Family Cicindelidae ハンミョウ科
Cicindelinae ハンミョウ亜科 
ナミハンミョウ Cicindela japonica Thunberg
前胸背は金属色、上翅は黒紫色でビロード状、各周辺と中央前の横帯が金属色。前胸背面は密にちりめん状のしわがある。上唇は前縁に5歯があり、正中部は縦に隆起する。平地〜低山地にかけて多く生活し、成虫は春から秋まで道の上など地表面にみられ、他の虫を捕えて食べる。幼虫は頭と前胸の背面が黒く、かたい地面に穴を掘ってすみ、穴の近くを通る他の虫を捕えて食べる。成虫は土中で越冬し、1か所に多数集合していることがある。
エリザハンミョウ(ヒメハンミョウ) Cicindela elisae elisae Motschulsky,1959
背面はくすんだ緑をおびた銅光沢をもち、上唇・上翅の斑紋は黄白色、体下と肢は金属光沢を帯び、白い鱗毛を散在する。平地のやや湿った場所におり、特に川原の粘土質の場所に多くみられる。成虫は初夏から秋にかけて現れ、地表面で他の小虫を捕食し、時には灯火にも飛んでくる。幼虫で冬越しする。
アイヌハンミョウ Cicindela gemmata aino Lewis,1891
背面は光沢がなく、暗赤銅〜暗銅緑色、上翅の凹点は緑色、点刻は濃青色に、体下は緑〜青紫色に光る。上翅紋は変化が少なく、翅端前の紋は翅端までのびる。上唇は横に長く、前縁はほぼ直線上。砂質の地面にすみ、河原の近くなどにみられるが、各地での生息場所は比較的限られている。成虫は春から夏にかけて現れ、地表にいてほかの虫を捕えて食べる。体長16〜19mm。
ホソハンミョウ Cicindela gracilis Pallas,1777
黒色で、背面、特に上翅は光沢がなく、前胸部はかすかに金属光沢をおびる。上唇の正中部、上翅両側の紋は黄白色。頭胸背はしわ条があり、上翅の点刻は青緑に光り、原型は後方会合部に赤褐色の長紋がある。赤褐色のないものはab. angustata。おもに平地〜低山地にすみ、成虫は夏に山林中を歩いており、一見アリのようでほとんど飛ばないというが、後翅はよく発達し、夜間電燈に飛んで来た記録がある。

ニワハンミョウ Cicindela japana Motschulsky,1857
背面は光沢がなく、暗緑か暗銅色、黒色型を産することもある。上翅面の凹点や点刻は黒く、体下は青緑〜青紫色に光る。上唇は横長で、前縁中央に鈍い歯突起がある。上翅斑紋は変化に富む。山地に多いが、平地にもおり、成虫は地表面で生活し他の虫を捕えて食べる。幼虫・成虫ともに越冬する。
カワラハンミョウ Cicindera laetescripta Motschulsky,1860
背面は光沢がなく、鈍い銅緑色、上翅の点刻は青緑色に光る。下面は緑紫色をおびる。上唇は横に長く、前縁中央はやや張り出し、1小歯がある。頭楯両側に弧状に刺毛列がある。上翅の白色紋はよく発達して周囲をかこみ、会合紋もあるタイプとないタイプが知られるが、信州産のものはないタイプのものである。翅端会合部はとげ突起がある。川原の砂地にすむ種類で、成虫はよく飛び、きわめて敏捷である。幼虫で越冬し、成虫は夏現れる。体長16mm内外。

マガタマハンミョウ Cicindela ovipennis Bates,1883
背面は光沢がなく、銅〜銅褐色、ときに緑色を帯び、上翅には赤緑色に光る凹点と点刻をそなえる。体下は赤銅〜赤紫銅色の光沢を持ち、緑色をおびる。上唇はほぼ三角で、前縁中央は鋭い歯があり、その両側に鈍い歯がある。後翅は退化して飛べない。主に山地の森林中にすみ、成虫は夏に地表を敏速に歩いている。体長15mm内外。長野県の記録は北部からだけで,伊那谷からの記録はない.
ミヤマハンミョウ Cicindela sachalinensis Morawitz,1862
背面は光沢がなく、暗緑〜暗同色の鈍い金属色を帯び、ときに黒色。上唇は三角で前端中央は歯状に突出する。上翅紋のうち中紋は屈曲し、翅端前紋は円形。体下は緑色に光る。山地〜高山性で、成虫は開けた道や川原などに春から夏にかけてみられ、地表にいて、よく発達した大さいで他の虫を捕えて食べる。成虫・幼虫ともに越冬する。標高1500m前後の山地の土の露出したところや、林道上で見られる。体長15〜20mm。
コハンミョウ Cicindela specularis Chaudoir,1865
背面は暗銅〜暗緑銅色、上翅の点刻は青紫色に光り、♀では各中央前になめらかな鏡紋がある。下面は緑〜青緑色に光る。上翅の紋は細かいがよく発達する。後腿節の下面には湾曲した毛がある。平地に多く、寺社の境内・草地・運動場・庭などにみられる。成虫は夏に現れ、地面で生活し、他の虫を食べる。幼虫はかたい地面に縦穴を掘ってすみ、あなのそばを通る他の虫を捕えて食べる。越冬は幼虫でする。
コニワハンミョウ Cicindela transbaicalicalica Motschulsky,1863
背面は光沢がなく、前頭背は銅色、上翅は暗銅〜暗銅緑色、くぼみや凹点は緑〜青く光り、縁部は小楯板ともしばしば赤銅色。上唇は横に長く、前縁中央に1歯がある。上翅紋はよく発達する。平地にも山地にもいて砂質の土地を好み、河原の砂地に多い。成虫は地表で生活し、他の虫などを食べ、越冬して春早くから活動するが、新個体は夏に現れる。幼虫は砂地にあなを掘ってすみ、あなのそばを通る他の虫にかみついて食べる。体長:12mm内外。
堀 道雄(1988) 海浜性ハンミョウ類のすみわけと共存.日本の甲虫:14-22(東海大学出版会)



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